今コンパクトエフェクターの代名詞とも言えるボスコンの愛称で親しまれているBOOSブランドのコンパクトシリーズをはじめ、革新的な製品を世に送り続けるRoland
間もなく発売を控える「Roland GR-D V-Guitar Distortion」と「Roland GR-S V-Guitar Space」にスポットを当て、VGプロジェクトのグループリーダーの福士氏に開発の経緯や、思いを語っていただきました。
対談
BOSS株式会社
VGプロジェクト グループリーダー
福士 直仁
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MUSICLAND KEY
青木 隆通
(L to R)
BOSS株式会社 福士 氏
MUSIC LAND 青木
今までGRやVGという世界を知らないお客様に使っていただきたい
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青木(以下、青):今日はよろしくお願いします。
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福士(以下、福):よろしくお願いいたします。
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青:いきなりですが、今度発売される「GR-D」と「GR-S」の開発、製品化に至った経緯をお聞かせください。
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福:なぜ作ったのかという経緯を?
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青:そうですね。
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福:そうですね……、いろいろとあるんですけど……(笑)
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青:ざっくばらんに(笑)
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福:今年からV-Guitarという形でフェンダーとギターを作りました。G-5というDSPを内蔵したもの、GKピックアップ自体を内蔵したGC-1の2種類です。ずっとローランドはギターシンセを製作してきました。今後も推進していくというところで、GKピックアップやGC-1の繋がる先が現行機種としてはGR-55やVG-99等しかない。そして、値段的にも少し敷居の高い物ものだけです。
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青:はい、かなりディープですね(笑)
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福:そう考えると、出来るだけシンプル操作にしたいという事と単純に価格帯のお求めやすいものと考えたんです。そこでツインペダルのスタイルを採用しました。エフェクターと言ってしまうと語弊がありますが、ギタリストに馴染みのあるエフェクター的な形、GRのエッセンスを抜き出した何か使いやすいものを。と言うところが一番最初です。
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青:要はエレキギターにはコンパクトエフェクターとマルチがあるけど、V-Guitarというカテゴリーにはマルチしかないから、コンパクトを作らなきゃという部分も?
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福:そうですね。今のVG、GRはラインナップが少ないので、V-Guitarとしてのラインナップを増やしたいというところがメインですね。
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青:GR-DとGR-Sの2機種とも特徴があるんですが、この製品をどういった方に使って欲しいというのはありますか?
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福:そうですね。既存のGRユーザーと言われる、GKを元々使ってる方にも触って欲しいというのはありますけど、今までGRやVGという世界を知らないお客様に使っていただきたい。どちらかというと提案型の商品なので、なかなか「万人に向けて」というものではないですけど、普通のエフェクターとは違うちょっと面白い音が出て、曲の中で使ってみたり、GRはちょっと手が出ないけど面白そうだなと興味を持っていた方には是非。
自分のセットの中に組み込んで使ってもらいたい、ツインペダルの形にした理由も1つはそこにあります
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青:ギターシンセというイメージが強くあるものに対して、もう少しライトにわかりやすく、GKを使わないと出ない音という別のアプローチの仕方をしていますよね。特徴はディストーション、スペースと両方ともあると思いますが、特にここに注目して欲しいという部分を教えてください。
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福:共通しているのは13PINのGKピックアップで弦ごとに処理をするからこそ得られる音です。それが一つは歪み、一つはクリーンというところなので、伝えたいことはどちらも基本は一緒なんです。
ディストーションの場合はPOLY DISTORTION。弦ごとにディストーションを掛け、濁りのないディストーションを出せるというところです。でも、これは昔からあると言えばあるんです。VG99にも同じような音が入っていますし。そう言う意味で前はDSP、内蔵のチップ、LSIのパワーがなくて、昔はこの形でやりたくても出来なかったんです。そこで、今出来る事、パワーが上がった事で出せる音を実現したい、それが出来るようになったのが大きいといったところなんですけど……、どう言ったら良いですかね……。
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青、福:(笑)
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福:ちょっと質問の答えになってないかな……。
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青:それではちょっと質問を変えて、福士さん個人的にこれをぜひ試して欲しいという音はありますか?
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福:個人的にはPOLY DISTORTIONが古いんだけど、新しいと思っています。前は正直ショボいと思っていたんですが、今回新しくパワーを掛けて出来るようになって、結構面白い音になったと思っています。個人的にはシンセ的な音も好きです。元々GRを好きで使ってる人なので、やはりシンセは外せないっていうのはもちろんあるんです。でも、POLY DISTORTIONと言うのを今回新たにやり直してみて、今までだったらブライアン・メイみたいな事をするしかあんまりなかったと思うんですけど、今回のは響きがちゃんとクリアで、変わったコンプの掛かったアコギみたいなニュアンス。今の音楽シーンに「アコギと違うんだけど、なんだろう?」って思わせる音じゃないかと思いますね。
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青:そこは注目して欲しいところという事ですね。
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福:そうですね。そして、音色のタイプが4つしかないんですが、COLORとかGAINとかツマミがあって、それで相当音色が変わるので、実は正直バリエーションがすごい多彩なんですよ。ビックリするぐらい。音色設定のメモリーが4つあるんですけど、4つじゃ足りないなっていうくらいです。こういう点も見て欲しいなと。
GR-Sの方ですが、どれも良いと思うんですけど、一番目の音色でクリスタルは注目ですね。クリスタルはギターらしくない。
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青:らしくないというか、出せないですからね。
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福:そうですね。曲に色付けする時のアイデアになるかなと。どれもオススメというところなんですけどね。
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青:全部の音色に特徴ありますからね。
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福:そうですね。
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青:あとは使い方次第でいろいろと……。
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福:そう、単体で使う、常にONにして使うものではないので、自分のエフェクトのセットの中に1個入れてもらって、他のエフェクターと一緒に色付けしてもらう。曲のどこかで使ってもらう等が良いですね。GRとかはそれだけで全てを完結しちゃうところが特徴なんですけど、そこが逆に敷居が高い。
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青:人によっては、使うかどうかで分かれちゃう部分ですもんね。
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福:そうですね。GR-DとGR-Sは自分のセットの中に組み込んでもらって、使ってもらいたいというのが一番良いですね。
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青:今自分で組んでいるエフェクターボードに、新しい物としてそこに1個入れてもらうというのが入りやすいですもんね。GRやVGを使おうと思うと、これはこれで全く別の使い方になってしまいますからね。だから新しいユーザー、今まで使っていない人は特に入りやすくなりますね。
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福:ツインペダルの形にした理由も1つはそこにあります。
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青:ボードに入れてもらう。
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福:そう、BCBシリーズに入りますよね。GRになると入らないので、BCBに入れられるものとして考えました。
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青:筐体をツインペダルにする事で、ペダルで簡単に操作出来るので使い勝手が良いですからね。
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福:そうですね。
好みもありますけど、万人受けするとは思っていません
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青:GR-D、GR-Sそれぞれに搭載する音決めをされたと思うんですが、やはりかなり試行錯誤されたんですか?
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福:相当時間掛けましたよ。あれ以外にボツになったのはたくさんありまして、あんまりタイプを多くしてもぼやけちゃうので4つにしようと。ディストーションといってもいわゆるただのディストーションではなくて、6弦独立処理のGK-Processingならではの音作りを意識しています。
普通のピックアップの場合、1弦から6弦まで全部一括で入って一括で処理されていますよね。例えば6弦にあわせて歪みを作ったりすると高域がイマイチ、高域に選んで合わせると低域がモソモソみたいな音になってしまいます。それを含めて作った音がこれ(DS-1)なんです。でも、バラしてそれぞれの弦で音を作るとしたら、もっと理想的な歪みになるんじゃないかという部分から色々と案を練って音を作りました。音自体はGKピックアップの信号を加工して作っているので、歪みの音も含めて全部作り込めるというのがポイントです。
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青:4つのタイプに絞ってCOLORで変えられるというのは分かりやすいですね。20種類位ある中から選択するより、かなり使いやすいですよね。
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福:そうですね。最初は「4つじゃ少ないんじゃないの?8個ぐらいないと」とか色々と議論しましたが、結果的に4つに絞ろうと。
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青:後は実際に試してもらうのが一番分かりやすいですね。
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福:そうなんです。その通りです。
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青:あの感じはもう言葉でうんぬんというようりは……。
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福:聞くだけや、ビデオを見るだけでは感じられない部分もあります。POLY DISTORTIONやシンセ音色みたいに、新しく違う音色だったらそれで感じられる部分もあると思いますけど、今回で言うとVG-DIST1の音は実際に弾かないと魅力はすべて感じられないですね。
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青:実際に弾いて出てくる音を自分で感じて。
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福:ですね。ただのディストーションじゃないんです。好みもありますけど、万人受けするとは思っていません。少なくとも今出来るBOSSの歪みの1つとして、6弦独立処理だからこそ出来る歪みというものです。
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青:後はもう実際に店頭で色々と弾いてもらうと。
エフェクターは私達の想定しないような形(使い方)で進化してきたんじゃないかと思います。その中の一つに入れてもらえれば
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青:他のエフェクターと組み合わせて弾くのも良いですか?
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福:他のディレイ等と組み合わせてみても面白いと思います。でも、実は中に空間系のエフェクトも簡易的に入ってるんですよ。単純にそれだけで繋いでもリバーブ、ディレイがないと寂しいのでそれは入っています(注:本体の空間系エフェクトはOFFにすることも出来ます)。ただ、その部分の設定まで出来るようにすると、もう本当にGRとかみたいに複雑になってしまうので……。そこは予めプリセットして、基本的な操作は音色の設定だけに絞ると。
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青:こんな試し方も面白いんじゃないかという提案等ありますか?
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福:そうですね、例えばGR-Dで普通の歪みとPOLY DISTORTIONを繋いで、混ぜたりとかしても面白い効果が出ます。シンセとかは効果覿面ですよね。シンセベースみたいな音にして、それとゴリゴリした歪みと混ぜ合わせてもかなり……。色々アイデア次第ですよね。
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青:無限に広がりますよね。
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福:私もまだ試しきれてないんですけど、いろんな組み合わせが出来るかと……。
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青:そこはユーザーさんの中から新しい使い方が出てくるという所ですね。そういう意味だと新しくGKに触れる人も、今までGKを使っていた人も含め、いろんな事をやってみて欲しいって部分もありますよね。
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福:エフェクターというのはそういう広がり方、使い方が私達の想定しないような形で進化してきたんじゃないかと思います。その中の一つに入れてもらえれば。
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青:それだけの内容が詰まっていますよね。
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福:そこは自信を持って頑張りました(笑)。こちらからも「こんな使い方が出来る」といった事も提案していきたいですね。
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青:貴重な時間を頂きましてありがとうございました。
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福:ありがとうございました。