「今までになかったサウンドを追求していく」という思想のもと、独創的なニュー・エフェクトを続々と開発している日本が誇るエフェクト・ブランド、BOSS
BOSSエフェクター・サウンドの要とも言えるCOSM技術を駆使し生み出されたME-70から、発売以来多くのギタリストから好評を得ているST-2、BC-2の音色を手掛けるなど、BOSSの中心機種といえるモデルの多くに携わる福士 直仁氏にお話を伺いました!!
対談
BOSS株式会社
第3開発部 グループリーダー
福士 直仁
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MUSICLAND KEY
伊藤 紘幸
(L to R)
MUSIC LAND 伊藤
BOSS株式会社 福士 氏
(ST-2とBC-2は)私も発売日当日に買いに行きました(笑)
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伊藤(以下、伊):はじめまして、よろしくお願いします。
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福士(以下、福):よろしくお願いします。
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伊:まずは福士さんの代表作を教えてください。
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福:おお実は、BOSSに入った当初はエフェクターの担当ではなく、Dr.Rhythm DR-770(リズムマシン)の音色を作っていました。その後、GT-6、GT-8でUI(操作系)のソフトを担当し、ようやくエフェクター開発の道に入れたわけです。Legend Series FDR-1やGT-10では音色に関わるDSP部分を担当し、ME-70では製品全体のプロデュースも経験させてもらいました。
変わった所では、ギタリストにフォーカスしたDTM製品 Cakewalk V-Studio 20も担当しています。最近ではGR-55のプリセットパッチ作成や、ST-2、BC-2といったコンパクト・シリーズの音色も手掛けました。
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伊:ボスの中心機種といえるモデルに多く携わっていらっしゃいますね。
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福:ありがたいですね。BOSSとして初めてギターメーカーの老舗フェンダー社とタッグを組んで開発したFDR-1は、相手のトップ陣との厳しいミーティングを重ねて完成させた1台で非常に思い出深いです。おかげさまで、フェンダー社からも「デラックス・リヴァーブの音を再現するエフェクター」とのお墨付きをいただきました。
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伊:BOSSエフェクターシリーズ大きなサウンド変革をもたらしたCOSM技術。それを最大限に駆使し製作された「ST-2」と「BC-2」は多くのギタリストから好評を得ています。
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福:ありがとうございます。良い音ですよね。私も発売日当日に買いに行きました(笑)
日夜トライ・アンド・エラーの連続ですよ
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伊:ST-2は多くのキッズからスタックアンプユーザーまで多くのギタリストに愛されています。開発の音決めはどのように行われたのでしょうか?また、COSMによる変化はどこにあるのでしょう?
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福:どの機種もそうですが、とにかく「良い音」を作るのが目標です。それと同時に「自分が実際にバンドで使いたくなるような音」であることが重要だと思っています。
音作りに関しては、まずは測定機を使って音の特性を合わせ込むことから始めますが、最終的には耳の勝負になります。日夜トライ・アンド・エラーの連続ですよ。ある夜「良い音が出来た!」と思っても翌朝聴いてみたら「あれ?昨日と全然違う……」という事も多々ありました。長い間作業していると耳が疲るんですね。最後は、開発スタッフ全員で様々なアンプ、環境で鳴りをチェックし、ようやく完成にこぎつけました。
質問のCOSMについてですが、例えばアンプをモデリングする場合、単に出音だけを似せるのではなく、アンプを構成する真空管やトーン回路、出力トランスといった様々な要素毎に特性を合わせ、それらを組み合わせることで結果的に元のアンプと同じ動作になる、という仕組みです。これはローランド独自のモデリング技術ですが、単に既存のアンプやエフェクターを模倣するだけでなく、各要素の特性や組み合わせ方を変えることで、アナログ機器では出せなかった音まで出せるようになる、というのが大きな利点です。
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伊:最新作の「BC-2」ですが、コンボアンプ特有の張り出し感と幅広いサウンドメイクが可能で早くも多くのギタリストに使用いただいています。こちらも福士さんが開発に大きく携わられたと聞いています。
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福:BC-2ではST-2以上に歪みの幅を広くするのに苦労しました。特にSOUNDつまみを絞った時のクリーン・サウンド。シングルコイルだけでなく、ハムバッキング・ピックアップを使っても綺麗なクリーントーンが出るように調整しました。
反対にSOUNDつまみを上げた時の歪み量については「こんなに歪まなくてもいいだろう」「いや、もっと歪ませた方が良いのでは?」といった具合に開発内でも様々な意見が飛び交いました。最終的にはシングルコイルでも気持ちよいロングトーンが得られる今の音色に落ち着いています。
世界的にも大変な状況にある今、音楽の力はとても重要だと感じています
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伊:BOSSで働いていて良かったこと、嬉しかったことは何でしょうか?
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福:何と言っても、自分が携わった製品が世界中の人に使ってもらえていること、ですね。また、自分で「こんな音を出したい」と思った音を実際に製品化出来ることです。
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伊:今後の展望やBOSSにかける思いをお教えください。
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福:世界的にも大変な状況にある今、音楽の力はとても重要だと感じています。その音楽を創って行く上で、一つでも多くのBOSS製品が皆様のお役に立てるよう、これからも知恵と体力を振り絞って新しい製品開発に取り組みたいと考えています。