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051 は Rupert 氏のビンテージデザインのクラシックな3バンドEQと Portico II の力強さと柔軟性溢れるコンプレッサーをひとつにしたプロセッサーモジュールです。
フルディスクリート、クラスAのシグナルパス、高品位の入力と出力トランスフォーマーによって構成された 5051 は音楽的な素晴らしいサウンドをもたらし、Rupert Neve への期待を裏切ることはありません。
■イコライザー
5051 のEQは Rupert 氏が過去に設計したいくつかのクラシックEQと類似しており、そのことを連想させるサウンドです。
5051 は中域バンドに厳選されたコンデンサーによるカスタムタップのインダクターを使用し、彼のビンテージモジュールとほぼ同じ周波数設定とシェルフカーブをベースにしています。
どのEQセクションにおいても低フィードバックのクラスAディクリート回路が使われ、余分なノイズや脚色の発生を防ぎ、大胆なサウンドシェイピングを施した際の不快さを生む要素を排除します。
様々な技術革新と最新の電子工学により、35年前には不可能であった点を改善し、5051 では非常に現代的な設計が施されています - そう、これは決してビンテージのクローンではなく、伝統の継承と言うべきでしょう。
高域と低域バンドは、シェルビングとピークの切り替えが可能で、15dBのブーストとカットが行えます。
高域の周波数は8kHzと16kHz、低域は35Hz、60Hz、100Hz、220Hzに、インダクターをベースにした中域は200Hz、350Hz、700Hz、1.5kHz、3kHzと6kHzを中心周波数として設定可能です。
そして、ミッドハイQではフィルターのバンド幅(ナロー/シャープと幅広)を変更できます。
また、5051 には18dB/oct仕様のハイパスフィルターが装備されており、LEDの色でカットオフ周波数、60Hz(青)と120Hz(赤)あるいはオフであることを表します。
このEQはスイッチ操作でプリまたはポストコンプレッサーに切り替えることができます。
なお、5051 にはふたつのXLRバランス入力が備わっており、例えばマイクプリアンプとDAWからの出力を接続し、必要に応じてソースを選ぶといったことも可能です。
■コンプレッサー
5051 のコンプレッサーでは、Portico シリーズで定評あるクラスAのシグナルパスと個別に操作できるスレショルド、レシオ、アタック、リリース、メイクアップゲイン、レシオをフルコントロールできます。
さらにサイドチェーンとソース素材に合わせて2種類のVCAモードと信号検知モードが用意されています。
コンプレッサーをオフにした際、5051 はトランスフォーマーカップルの特性とサウンドに優れたラインアンプとして機能し、2台の 5051 をリンクしてステレオでの信号処理に使うこともできます。
■コンプレッサーの動作
V.C.A.とは、Voltage Controlled Amplifier (またはAttenuator) の略で、電圧を利用してゲインをコントロールします。
電圧を用いたコントロールデバイスは多く存在します。
真空管を使用したものや、ディスクリートのもの、統合されたソリッドステート回路、ナチュラルなノンリニアデバイスなど、それぞれの回路設計やパーツ、挙動によって固有のキャラクターを備えます。
その多くは素晴らしく、魅力的かつ音楽的な仕上げを行うことができます。(もちろんそうではないものもあります。)
5051コンプレッサーは Portico モジュールと同様、非常に正確かつローノイズ、低歪のV.C.A.回路を搭載し、特別なキャラクターがないのが特徴です。
V.C.A.の動作は電圧制御に適したものに変換されたオーディオ信号の一部を使用します。
このことで素早い応答速度を実現しながら歪みを抑えることができます。
このバランスが絶妙で、応答速度が速すぎる場合、余計なゲインコントロールが生じます。
逆に遅すぎる場合は信号過多になったり、コンプレッションが信号の頭に効かなかったりします。
この応答速度とタイミングの精度がコントロールパラメーターの "アタック"、イニシャルコントロールされたゲインの持続時間が "リリース" もしくは "リカバリー" パラメーターとなります。
これらの要素がコンプレッサーサウンドを形成する上で大きな役割を果たします。
■V.C.A.モード - FFとFB
5051 にはふたつのコンプレッションモード : FF (フィードフォワード) とFB (フィードバック) が用意されており、フロントパネルのFF/FBスイッチで切り替えが可能です。
V.C.A.の制御電圧を 5051 の入力信号(V.C.A.の前段)から取った場合、ゲインの変化に対してV.C.A.は即座に反応します。
これが一般的な "FF" タイプのコンプレッサーの理論です。
"FB" タイプのコンプレッサーは、5051 の出力信号(V.C.A.の後段)をV.C.A.の制御電圧に使用します。
この場合、V.C.A.はゲインの変化に対して即座に反応することができません。
何故ならば信号はすでにコンプレッサー回路によって整えられているからです。
これらふたつのコンプレッサーモードのキャラクターは決定的に異なります。
特にアタックとリカバリー(リリース)の挙動に大きな違いがあります。
5051 では実際に使用しながらふたつのモードから適した方、あるいは意図した方を選ぶことができます。
過去に Rupert 氏が設計したコンプレッサーのほとんどは "FB" タイプです。
このモードは "FF" タイプよりも音楽的かつ心地好良い効果をもたらします。
逆に "FF" タイプは入力信号に対してより正確に動作します。
こちらは近年の設計で採用されています。5051 ではビンテージとモダン、その両方のコンプレッサーを装備し、選択することができるのです。
■レシオとスレッショルド
コンプレッサーはスレッショルド値を超えた信号レベルに対して作用し、1:1から40:1以上の圧縮率で信号を抑えます。
1:1のレシオ(圧縮率)設定は入力に対して何も作用せず、そのままリニアに出力します。
40:1の高圧縮率はリミッターとして使用する際に設定します。
コンプレッサーのレシオは、その入力と出力の対比を表すグラフからしばし、"スロープ(Slope)" と呼ばれることがあります。
レシオとスレッショルドは相互関係にあります。
例えば、レシオを最高の40:1、スレッショルドを0dBuに設定した場合、+40dBuの入力信号(実際はありえない大レベルです!)はコンプレッサーによって+1dBuに抑えられて出力されます。
一般的に高いレシオ設定は、0dBu以上のレベル処理に適しています。
例えば、スレッショルドを+14dBuに設定した場合、出力信号のレベルが+14dBu以上になるのを抑えます。
特にデジタルレコーダーに信号を送る際のレベル過多を防ぐのに有効です。
このように出力レベルを抑える場合、例としてレシオを5:1に設定しスレッショルドを10dBにしておけば、10dB以上の信号は2dBに抑えられて出力されます。
スレッショルドの設定範囲は-30dB ~ +22dBuになります。
スレッショルド値が低く、レシオ値が高い場合、低い信号レベルはさらに低く抑えられますので、ゲイン(メイクアップ)でコンプレッサーによって抑えられた分のレベルを持ち上げる必要があります。
■アタックタイム
アタックはコンプレッサー回路がレベル圧縮を開始する時間を決定します。
アタックタイムを長くした場合、サウンドの頭を外したコンプレッションが行えます。
つまり、入力されたサウンドの短いピークにはコンプレッサーは効かず、音本来のトランジェントを活かした、自然なコンプ効果を得ることができます。
しかしながらこのテクニックは、後に接続されている機器に抑えられた適切なレベルが送られない場合があります。
特にデジタル機器では意図しないオーバーロードは厄介ですので、注意しましょう。
非常に短いアタックタイムに設定した場合、サウンドのトランジェントを取り除き、サウンドに不自然さを招く場合があります。
中にはトランジェントが極端に速く(短く)、サウンドへの影響がほんのわずかな場合もあります。
このようなケースでは、長いアタックタイム設定をすることでコンプレッサーが機能する前のトランジェントピークが終了し、ゲインがほとんど抑えられていないことになります。
この部分のレベル過多が顕著になると前出のオーバーロード(歪み)を招く可能性があります。
しかしながらどんなに速い回路であっても、多少何らかの歪みを持っています。
これがほんのわずかなものであれば、例外として音楽的な結果をもたらす要因となることもあります。
適切なアタックとリリースの設定は、コンプレッサーのすべてと言えます。
コンプ/リミッターの原理法則を理解することで 5051 を適切なダイナミックレンジコントロールをするためのパワフルなツールとして扱えるようになります。
結果、音楽的に素晴らしい結果を得ることになるでしょう。
■リリース(リカバリー)
リリースは信号レベルがスレッショルド値以下に下がった際に圧縮を終了するまでの時間を設定します。
リリースタイムを短く設定した場合、素早く元のレベルに戻ります。
この設定が短すぎる場合、レベルの変動は不自然になり、時として音量が極端に増減する "ポンピング" 効果を生み出します。
このような効果は特に信号の低域で顕著になることがあります。
リリースタイムを長くすることで、信号レベルが一定になります。
特に低いノートやスピーチの音節の繋がりを自然に処理する際に有効です。
ここまで、5051 (コンプレッサー) がどのように信号の音量を扱うのか、例やヒント、注意点を交えて解説をしました。
しかしながら実際の信号レベルは常に変化し、一定ではありません。
従って、実際に音素材を扱いながら、最適な設定を見つけることをお勧めします。
ソース信号の音量、ピークの長さに合わせ、不自然にならないように設定をしましょう。
経験に勝るものはありません。良い音がするセッティングにチャレンジしましょう!
■パワーサプライ
5051 は、5088 コンソール、または 5285 バーチカルフレームにセットして使用します。
2種類の±24Vのパワーサプライが別売オプションとして用意されており、5-way Power Supply はラックの下に、25-way Power Supply は2Uサイズの空きスペースがあるラック内に設置することが可能です。
±24Vの供給に外部のパワーサプライを使用することで、クリーンな電源供給とDC駆動によるモジュールへの熱の影響を防ぎます。
スペック
■最大入力レベル : +25dBu @ 20Hz ~ 20kHz
■最大出力レベル : +25dBu @ 20Hz ~ 20kHz
■周波数特性 :
メイン出力、負荷なし
-3dB @ 2.5Hz、-3dB @ 125kHz
■ノイズレベル :
メインアウトで計測、unweighted、22Hz ~ 22kHz、40Ωターミネート、ユニティーゲイン
–102dBu以下
■THD+N (全高調波歪み率) :
10Hz ~ 80kHz以下、+20dBu出力
0.002%以下 @ 1kHz
0.120%以下 @ 20Hz
0.010%以下 @ 20kHz
■コンプレッサー部 : スレッショルド @ +20dB、レシオ @ 1.1:1、ゲイン @ 0dBで測定
■ノイズレベル :
メインアウトで計測、unweighted、22Hz ~ 22kHz、40Ωターミネート、ユニティーゲイン
–92dBu以下
■THD+N (高周波歪み率) :
10Hz ~ 80kHz以下、+20dBu出力
0.020%以下 @ 1kHz
0.140%以下 @ 20Hz
0.070%以下 @ 20kHz
※仕様は予告なく変更となる場合があります。