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究極の“サウンドパレット”Portico 5042を受け継ぐ500シリーズモジュールとなる542は、テープレコーダーが備えるあの特徴と厚みを持った音楽的な効果を提供する新しい機能が備わっています。
542には素晴らしい3次倍音効果をもたらす“トゥルーテープ”回路に加え、ソフトクリップ機能によってソースから耳障りな成分を除去します。
そして多才なシルク/テクスチャー回路で2次倍音を強調した3種類のトランスフォーマートーンを演出し、ウェット/ドライコントロールで最適なサチュレーション量を調整することができます。
“トゥルーテープ”回路はデジタルによる擬似効果ではなく、カスタム設計のトランスフォーマーをテープレコーダーの録音ヘッドのように扱い、適切に調節された再生アンプとともにテープ録再時のサウンドを再現し、録音ヘッドに電圧をかけた際と同様のサチュレーション効果を得ることができます。
ソフトクリップ回路は信号過多の際のピークトランジェントを柔らかくし、不要な歪みを防ぎます。また、よりディープなテープサウンドのために、15と30のIPS(テープスピード)設定とプリ/ポストテープのブレンドコントロールも用意されています。
そしてPortico II シリーズのモジュールにも備わっているシルク/テクスチャー回路で、出力トランスフォーマーによる最終的な倍音比と音色の仕上げを行います。
542の必要性と役割一昔前までは、テープのノンリニア特性(つまり原音に対する忠実性)は特色というよりは欠点と考えられていました。
そしてデジタルシステムの出現と普及に従ってリニアな作業が当たり前になり、逆に多くのノンリニアのオーディオ処理が再評価されることとなりました - テープレコーダーのサウンド効果もそのひとつです。
ノンリニアデバイスを扱う際、リニア設計とは異なり、ユーザーは適切な効果を得るためにゲインを積極的に操作して、その回路の最も美味しい部分、いわゆる "スイートスポット" を見つける必要があります。
エンジニアとっては語る必要もなく当前のことですが、この小さな努力によって習得した技術は、楽曲のインパクトを高めるための劇的な効果をもたらす要因のひとつとなります。
542の "トゥルーテープ" 回路によるノンリニア特性とサチュレーションコントロールによる適切な効果を得るには、入力レベルとドライブ量に注意を払う必要があります。
542のテープ回路の入力レベルはサチュレーションコントロールの位置とドライブレベルとともにその特徴的なサウンドを決定づけます。サチュレーションが増すと低域の補正作用は減少し、ドライブレベルを "5" に設定するとソフトクリップが作動します。
低域特性とトータルハーモニックディストーションの最適なバランス、そして必要に応じたソフトクリップに関する操作は、サチュレーション、トリム、ブレンドコントロールで行います。
場合によっては、542に入力する前にダイナミクスプロセッサーを使用してゲインを整える必要があるでしょう。
設定に関する概略は次の通りです:入力レベルを2〜10dBu付近に設定し、サチュレーションを加え、15/30IPSを選び、シルクを操作、ブレンドで適度な量を仕上げます。
エンジニアはソース音源に対して最良の結果を得るために、常にテープ処理する前のサウンドとテープサチュレーションしたサウンドのレベルバランスを見つけることに時間を費やしますので、同様にお望みの結果になるようにブレンドコントロールを操作しましょう。
サチュレーションと“テープヘッド”の関連性と作用を理解し、より適切な操作をするアイディアを得るには、マニュアル後半の技術白書に記載された周波数特性、および周波数特性によるTHDのグラフを参考にすると良いでしょう。
また、実際のテープマシーンと同様に“トゥルーテープ”回路には不安定な要素を生み出す“フラックスループ”" も備わっています。これは強い近隣磁界の影響を受けた信号を拾い上げるために使用されます。(この影響はソースがパワーサプライやパワーアンプ、コンピューターディスプレイなどの近くに位置する際と似ています。)
もちろん、テープ回路を含めユニット全体に作業環境に散在する電磁波などの影響を最小限にとどめるためのシールド設計も施されています - もし、テープ回路をオンにした際にハムノイズが混在する場合、542の設置場所を変え、磁界の発生源から遠ざけてハムノイズの軽減を試みてください。
テクスチャーコントロール“テクスチャー”はソース素材に含まれている音楽的な倍音成分を操作、調節する機能で、“シルク”モードはその倍音成分を切り替えます。542 のテクスチャーコントロールは、Porticoに装備されているオリジナルのシルク回路よりも最大でおよそ4倍のハーモニックディトーションを意図的に加えることができます。
シルク回路はその歪みと倍音効果によって、Rupert Neve 氏が過去に設計したクラスAのビンテージ機器の特性を思い起こさせてくれることでしょう。542においては音色全体をコントロールし、“トゥルーテープ”の効果をより良い方向に仕上げる際に使用します。
スペック
ラインアンプ(テープ回路オフで測定)●最大出力レベル
+23.25dBu
●周波数特性
+10dBu、ユニティーゲインにて計測
±0.25dB @ 5Hz〜60kHz
-2dB @ 120kHz
●ノイズレベル
メインアウトで計測、unweighted、22Hz〜22kHz、40Ωターミネート
–100dBu以下 @ ユニティゲイン
●THD+N (全高調波歪み率)
+20dBu出力
0.0025%以下 @ 1kHz
0.07%以下 @ 20Hz
テープ回路オン時●周波数特性15IPS、-0dBu入力:
-3dB @ 28kHz
0dB @ 10Hz、サチュレーション最小
+5dB @ 60Hz、サチュレーション最小
-3dB @ 20kHz、サチュレーション最大
-3dB @ 12.5Hz、サチュレーション最大
+2.4dB @ 60Hz、サチュレーション最大
30IPS、-0dBu入力:
-3dB @ 120kHz
-3dB @ 10Hz、サチュレーション最小
+3.15dB @ 125Hz、サチュレーション最小
-3dB @ 100kHz、サチュレーション最大
-3dB @ 12.5Hz、サチュレーション最大
+1.3dB @ 110Hz、サチュレーション最大
●ノイズレベル
メインアウトで計測、unweighted、22Hz〜22kHz、40Ωターミネート
–100dBu以下 @ サチュレーション最小
–100dBu以下 @ サチュレーション最大
●THD+N (高周波歪み率)
15IPS、-0dBu入力:
0.4%以下 @ 3kHz
1%以下 @ 175Hz
1%以下 @ 175Hz、サチュレーション最小
1%以下 @ 6kHz、サチュレーション最大
0.3%以下 @ 1kHz、サチュレーション最大
3%以下 @ 50Hz、サチュレーション最大
30IPS、-0dBu入力:
1%以下 @ 1kHz
0.6%以下 @ 400Hz、サチュレーション最小
5%以下 @ 20Hz、サチュレーション最小
1%以下 @ 6kHz、サチュレーション最大
1.5%以下 @ 20kHz、サチュレーション最大
0.4%以下 @ 1kHz、サチュレーション最大
3%以下 @ 50Hz、サチュレーション最大
●電源
500シリーズラックより供給、110〜125mA @ ±16V DC
※ 仕様は予告なく変更となる場合があります。