結果として、Secede from T.S. modではドライブサウンドとクリーンサウンドが分離した関係にあり、ドライブサウンドの歪み量、およびレベルの調整は本体のDriveで、クリーンサウンドのレベルは増設されたAdditional Clean Vol.で行います。この追加されたコントロールにより、気に入ったドライブサウンドにクリーンサウンドを任意のバランスでミックスすること、また、その逆であるクリーサウンドにドライブサウンドを任意のバランスでミックスし、調整することが可能になりました。ドライブサウンドに欠けた太さをクリーンサウンドをミックスすることで補う使用方法は非常に有効です。一方、Driveを下げ、クリーンブースターとして使用する際も、Additional Clean Vol.を上げることでブースト量が増え、より力強くアンプをプッシュすることが可能です。
また、バッファー部分を作る素子にかかる電圧や、アクティブ型のトーンコントローラーにも手を加え、もともとのOD-820が持っていた甘く、太いオーバードライブサウンドとは大きく異なる、クリアでアタックの速いサウンドを宿すようになりました。そして、それはオリジナルのCentaurとも大きく異なります。試作段階では実際にKlon Centaur(Gold Long Tail)とも比較を続けながら設計を行なっていましたが、試作を続ける中、CentaurのトーンはCentaurならではであり、それをわざわざフォローする必要はないという結論に達したため、別の優れた音楽性を追求し、Centaurにはない明瞭な音の速さ、歪みの滑らかさ、そして追加されたAdditional Clean Vol.によって作られる、弛みのない太さを得たのです。
かつて、ここまで自然にクリーンサウンドをミックスできる歪みエフェクターはなかったはずです。主観ではありますが、同様の機能を持った多くのモデルは不自然に原音が混じり、使い道を考えるのが難しいことばかりでした。しかし、このOD-820 Secede from T.S. mod.は違います。クリーンなアンプで使用する際には素性の良いTS系オーバードライブサウンドにクリーンミックすることで太さを加え、速さと太さを兼ね備えた、ロックなドライブサウンドを作ることができます。クランチしたアンプでは、力強いクリーンブースト効果とアンプのクランチで基本の音を作り、そこにTS系が持つ分離感の良いオーバードライブを混ぜ、アンプの良さを生かしたまま、弾き心地の良いオーバードライブサウンドを作ることができます。結果として、〜〜系とは離れた、アンプを選ばない非常に優れたオーバードライブペダルとなったのです。
このOD-820 Secede from T.S. mod.は、古典的なTS系のオーバードライブでもなく、宗教的なKlone系でもありません。それらから完全に分離した、新しい理想的なオーバードライブであると、CULTと田村進 氏は自負しています。