FACTORY TOUR
2019年6月某日、ドイツの“Markneukirchen(マルクノイキルヒェン)”にあるWarwick本社工場に、今年も行って参りました。カッコイイショールームに綺麗な工場内、最新鋭のオートメーションと高い技術を持つクラフトマンのハンドメイドの工程による、徹底したクオリティの追求。木材へのこだわり、材の種類も豊富で、ストックの量にも毎度毎度驚かされます。そんな木材の中から、杢、木目を厳選してオーダーして参りました。
さらに、Warwickは、工場内も非常にオープンで掲載OKですので、あまり見る機会のない内部をバシバシ撮ってきました。FACTORY TOUR内の画像も、差し替えて更新していきますので、せひご覧ください!
羽田からは約12時間のフライト。天候も良く無事にミュンヘンに到着。12時間座りっぱなしもしんどいですが、ここからさらに車に乗り換え、アウトバーンを飛ばして約4時間。
前回はそうでしたが、今年はコースレコード出ました(笑)。約2時間半でホテルに到着。
基本緑が多く、草原、田園風景を移動。牛や馬なども見かけましたが、街に入ると雰囲気のいい街並みが見られます。
現地時間で20時過ぎ、軽く食事を取り、翌日から工場へ。
工場に着いてオフィスに挨拶に行くと、以前来日時にプレゼントした、今は作っていないKEYマグカップがありました。うれしいですね。
ショールーム
お洒落な受付に、ソファやモニターのあるショールーム。特大のアーティストパネルにアーティストモデルが展示され、ダブルネックや初期の頃のサムベースなど希少な楽器も展示されていました。ショールーム、カッコ良すぎる。
奥には、購入可能な国内にはあまり入荷のないモデルや最新のフィニッシュが施されたモデルなど、100本以上の楽器が展示されていました。塗装にもこだわりが見られるWarwickですが、ニューフィニッシュの施されたモデルも展示されていました。試奏ブースや撮影ブースもあり、Warwickサイトのギャラリー画像も撮られています。
木材倉庫
まずは木材倉庫。倉庫の大きさと量にビックリ!写真に写っているものは一部で、これの3、4倍ぐらいの木材スペースがありますかね。Warwickではおなじみの、ブビンガ、メイプル、ウェンジはすごい量のストックです。ネック材は、柾目、板目で分けてありました。
質問をしてみましたが、木材へのこだわりがすごい!基本、丸太で仕入れてきてカットしているそうです。外樹皮を見て内側の状態もわかるとのこと。手間はかかりますが、品質管理ができるということ、完成時のルックス、クオリティにも影響がでるところなのでそうしているそうです。木材のためにも、のちに動きがでないように、機械での乾燥は基本しないで、じっくりとこの倉庫で自然乾燥をしているそうです。 この倉庫から、数年後、数十年後、楽器が生まれるわけですね。
こちらには、ある程度製材したものが棚に並んでいます。Warwickではおなじみの木材から、プレミアムウッドがぎっしり。上のほうは、キャタツを使わないと届きません。
しっかりと湿度管理もされており、適正な含水率になるよう乾燥されています。レギュラーモデルの仕様ではなかなか見れない木材もいっぱいあります。20種類、いや30種類ぐらいか、とにかく材の種類も豊富でした。サムベースで同じみの“ブビンガ”、ストリーマー系では“カラードフレイム”、“フレイムメイプル”が大量にストック。うわっ、“バックアイ"もある、“ポプラバール”、“スポルテッド”、“パープルハート”、“ブラックウッド”、“ウォルナット”、“レッドウッド”、“ゼブラウッド”、“キルテッドユーカリ”、“バールオリーブアッシュ”、聞いたことない木材も。木材、杢目フェチにはたまらない!
Warwickが初入手した超レア材の“マホガニーバール”と“ブビンガバール”。
杢目もすごいですが、このサイズに驚きました。
工場内に見ているだけでも飽きないプレミアムウッドがいっぱいでした。この木材も含めて、膨大な量の中からお目当ての木材を探し出します。倉庫の棚隅々まで、木材を引っ張りだしては杢の確認を繰り返し、極上材を選定していきます。
セレクトした木材はのちほど。
木工工程
木材の製材、ラミネート
倉庫で乾燥を終えた木材をボディ、ネックのサイズにあわせて製材していきます。製材を終えてラミネート待ちの木材が積まれています。うわっ!すごい杢のブビンガが!
この後に、含水率を測る機械に木材を乗せて、数値によって分けていき、含水率の近いものを貼り合わせていきます。
これは、木材の動きが出たときを考えてのこと、動きが出にくいように、トラブル防止のために行われている作業。
ボディ材をラミネートする機械。含水率だけでなく、木目も考えて貼り合わせます。木材の動きだけでなく、仕上がりのルックスにも関わるところ。時間はかかりますが、しっかりと選定していることでクオリティの高いものが出来上がっているんですね。
ネックの荒加工
写真の流れで加工が進みます。まず、ラミネートされたネック材の断面。これは4ピースのものですが、サイドの2枚とセンターの2枚で木目が違うのがわかると思います。ネックの反り、動きを考え木目の向きを変えて貼り合わされています。
ロッド溝など加工のほとんどは、オートメーションで進んでいきます。Warwickのネックのトラブルは近年聞かないですが、トラスロッドの両脇にハイポジション付近にずらして入れられている補強材。計算されたこの働きもあるようです。実は、1本から2本分のネックを製作していました。ここまで、含水率、木目など、しっかりと選定されてきた木材、これなら無駄なく使えますね。環境にも優しい。
工場内
工場とは思えないぐらい綺麗でした。天井は、乾燥していると自動的にミストが出るようになっていました。木材の仕入れ段階から、乾燥、ラミネート時と、常に木材の状況を考えて製作されています。
ネックシェイプ、指板R、フレット打ち、すり合わせ、ロッド調整
にしてもすごい機械。値段は言ってませんでしたが、すごい高いよとのこと。
この機械で、ネックの加工はほとんど仕上がります。
ボディ加工
木工作業・最終工程
機械ではできない細かな作業、ドリルの穴加工、フレットエッジの処理などの最終のフレット作業や、ボディ、ネックの最終仕上げ、研磨など、大事な部分は熟練のクラフトマンによっておこなわれます。サンダーやグラインダー、フレットバフなどの機械は備わっています。
工場生産、機械加工というものにいいイメージを持っていない方もいると思いますが、量産目的が先行したものではなく、人の手よりも正確にできるもの、仕上げ、クオリティを求められる部分には、最新のオートメーションを導入していく。同じ結果が求められる部分、シェイプ、トラスロッドの仕込み、フレットの打ち込みなど、精度の個体差は生まれなくなります。木材の目利き、乾燥、含水率の測定、ラミネート時の木材の選定など、木材による個体差が生じやすい部分、最終仕上げの工程には、高い技術を持つ”人"によって時間をかけておこなわれていく。
単調な作業をオートメーションにすることで、この最終工程にもしっかりと時間をかけて作業ができます。単純作業による労働意欲を削ぐことも防げ、クラフトマンの負担も軽減されることにより、人の技術でしかできない大事な部分にはしっかりと時間をかけられ、個体差も低減でき、高品質の楽器製作が可能となっています。
いろいろ話しをしてくれましたが、いいものをつくろうという作り手の“熱”をすごく感じられ、非常に感動しました。最新鋭のオートメーションと高い技術を持つクラフトマンの融合ですね。
塗装工程
新しいフィニッシュや特殊塗装など、塗装へのこだわりも見られるWarwickですが、手作業にて吹かれています。入り口には粘着性のシートでホコリやゴミを取り、ブース内もクリーンな状態で、完全に密閉して作業がおこなわれています。
またまたマシーンが登場。このボックスの中にギターが入ると、上がったり下がったりとアクロバットな動きを。十数秒で乾燥ができるというすごいマシーン。これは、塗装工程の時間を大幅に縮められますね。塗装後の研磨、水研、バインディング部などの細かな作業がおこなわれています。サンディングを終えた着色待ちのボディ。カラーサンプルかな、手板も吊るされていました。
塗装はかなり薄く吹かれていると説明を受けている時、塗装工程の終わった組み込み前のボディを持ってきて、「塗装が薄い上に丈夫だ」と言った後にとった行動が、ポケットからキーホルダーを出し、まさかの塗装面にカツカツ鍵をぶつけだす。「これぐらいならキズはつかないよ」と。さらに、アセトンを持ってきてボディにかけて放置。そのあと拭いて塗装面を見せられ、「なんともないだろ?」と。「薄くて丈夫なこの塗装は、うちぐらいだよ」と自慢気に言ってました。塗装へのこだわりも、やはりすごかった!
組み込み、セットアップ
塗装を終えたボディ、ネックを組み込み、セットアップしていく作業台。セットアップを終え、出荷待ちの楽器も並んでいました。その中に、またまたアーティストさんのオーダーモデルを発見。Rex Brownのオーダーモデルだそうです。セットアップも終わり出荷待ち。
最終日に、基本セットアップを教えていただき、セットアップをしていく様子を間近で見れるという貴重な体験もできました!気になっている方もいると思いますがネックのトラスロッドの効きも見せてくれました。
力いっぱい回しだして、反りの状態もかなり逆反り。ここからさらに回してごらんと渡され、かなり硬い状態でしたがまだまだ回りました。硬かったり、音がしたりすると、もう回しちゃまずいと思ってしまうようだけど、Warwickのネックは全然大丈夫だよと。こんなに回すことはないだろうというぐらい逆反りになってました。近年ネックトラブルの話しを聞かないのも納得できました。
ファクトリーツアーでお世話になったWarwick社の方々、日本代理店の方々には大変にお世話になりました。大変感謝しております。 Warwickの楽器製作に対するこだわり、製作工程、熱を感じることができたドイツ工場でした!